人手が足りず、修繕を来年に回したら?
前回は、インフラの維持管理では、特定の年に多くの人手が必要になることをご紹介しました。では、その年に必要な人手を確保できなかったら、どうなるのでしょうか。
例えば、橋梁の補修を今年予定していたものの、人手不足のために翌年へ延期したとします。今年の補修作業に投入した労働量は、ゼロかもしれません。しかし、補修の必要性そのものが消えたわけではありません。仕事を実施しなかったことと、必要な仕事がなくなったことは、別の話です。
先送りされた仕事は、積み残されていく
ここで、Backlog(バックログ)という考え方をご紹介します。Backlogとは、必要とされているものの、まだ実施されていない業務の蓄積のことです。
例えば、ある橋で今年5人年の補修が必要だったとします。ところが、人手不足で2人年分しか実施できなかった場合、単純化すれば3人年相当の仕事が残ったことになります。翌年に新たな補修が必要になれば、それは積み残した仕事に上乗せされます。
| 項目 | 1年目 | 2年目 |
|---|---|---|
| 新たに必要な労働量 | 5人年 | 4人年 |
| 実施できた労働量 | 2人年 | 3人年 |
| 年度末の積み残し | 3人年 | 4人年 |
※単純化した架空の説明例です。積み残しの実際の労働量は、施設の状態や作業内容の変化によって増減する可能性があります。
仕事を先送りするほど、将来の労働需要が増える可能性がある。ここでは、その点を押さえていただければ十分です。
実施した労働量だけを見ていては分からない
もう少し広い視点で考えてみます。ある自治体が今年、橋梁の維持管理に10人年の労働力を投入したとします。しかし、本来必要な業務が15人年相当あったとすれば、5人年相当の仕事が実施できなかった可能性があります。
投入した労働量だけを見れば10人年ですが、インフラを適切に維持するために必要だった労働量は15人年だったわけです。
HLRが評価したいのは、実際に投入された労働量だけではなく、インフラを維持するために必要な労働量です。この違いは、今後の人手不足を考えるうえで重要になります。
先送りすれば、将来の仕事が増えることもある
補修を先送りした場合、翌年に同じ作業をすれば済むとは限りません。劣化が進めば、当初は小規模な補修で済んだものが、大規模な補修や部材交換を必要とするかもしれません。その場合、必要な人的労働量そのものが増えることになります。
ただし、すべての先送りが、直ちに労働量の増加につながるわけではありません。劣化の状況や安全性を確認したうえで、合理的に実施時期を調整できる場合もあります。
つまり、「未実施業務の量」と「先送りによる必要労働量の変化」は、分けて考える必要があります。
見えない仕事を、見えるようにする
人口減少によって、インフラの維持管理に十分な人手を確保できない地域が増えるかもしれません。そのとき、実際に実施された仕事だけを集計していると、必要だったのに実施できなかった仕事が見えなくなります。
HLRでは、必要な労働量と実際に投入された労働量を区別することが重要だと考えています。さらに将来的には、未実施業務の蓄積も把握できるようにしたいと考えています。なお、Backlogをそのまま正式なHLRに加算すると二重計上になるおそれがあるため、現時点ではHLRと関連して把握すべき補助的な情報として位置づけています。
仕事をしなかったからといって、その仕事が不要になったわけではありません。人手が足りず、実施できなかった仕事は、将来へ持ち越されます。その見えない積み残しにも目を向けることが、これからのインフラ維持管理には必要なのではないでしょうか。

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