【シリーズA】HLRは「答え」より入力条件が難しい【第5回】

HLRでは、計算結果を出す前に「何を、どんな条件で、どこまで計算したのか」を決めることが重要です。同じ「50mの橋」でも、入力条件が違えば必要な労働量は変わります。今回は「計算が難しい」というお話ではなく、計算する対象をきちんと定義することが難しい、というお話です。

目次

1.同じ「50mの橋」なら、同じHLRになる?

これまでの記事では、地方にある長さ50m程度の道路橋を共通の例として使ってきました。

では、50mの橋でHLRを一度計算できれば、別の50m橋にも同じ数字を使えるのでしょうか。

もちろん、そう単純ではありません。同じ50mでも、橋にはさまざまな違いがあります。例えば、

  • コンクリート橋なのか、鋼橋なのか
  • 橋の幅はどれくらいか
  • 山間部なのか、市街地なのか
  • 交通量は多いのか少ないのか
  • 海沿いなのか内陸なのか

といった違いです。長さが同じでも、条件が違えば建設方法も維持管理も変わり、必要となる労働量も変わってきます。

ここでは具体的な労働量までは計算しません。ただ、「50m」という一つの情報だけでは足りないということを、直感的に感じていただければ十分です。

2.橋そのものだけでなく「何年間見るか」でも変わる

さらに、まったく同じ橋だったとしても、計算の仕方によって答えは変わります。

例えば、

  • 50年間を評価するのか、100年間を評価するのか。
  • 建設から考えるのか。
  • 完成後の維持管理だけを見るのか。
  • 最後の更新や撤去まで含めるのか。

つまり、HLRを計算するには、橋そのものの条件だけでなく、「どこから、どこまでを計算するのか」も決めなければなりません。

3.「この橋のHLRは19人年です」だけでは足りない

ここで、前回までに使った「19人年」に再び登場してもらいます。

例えば、「この橋のHLRは19人年です。」と言われたとします。

数字が出ると、それだけで何かが分かったような気がします。しかし実際には、

  • どんな橋なのか。
  • 何年間を評価したのか。
  • 建設を含むのか。
  • 維持管理だけなのか。
  • 更新や撤去まで含むのか。

これらが分からなければ、「19人年」という数字だけを別の橋と比較することはできません。

HLRでは、答えだけでなく「何を計算した答えなのか」が重要になります。

4.答えを出す前に「問い」を固定する

ここが、今回の中心部分です。

一般に「計算」というと、難しい計算式を作ったり、数字を求めたりするところに目が向きやすいものです。ところが、HLR Engineを考えていくと、その前に大きな問題があります。

そもそも、何を計算するのか。

言い換えれば、

答えを固定する前に、設問を設定しなければならない

ということです。

第2回でご紹介した、

同じ入力条件+同じ計算ルール → 同じ結果

という再現性を実現するためにも、その「入力条件」が何だったのかを明確にしておく必要があります。

5.では、条件を細かくすればするほど良い?

ここで少しだけ、次の課題もご紹介します。

それなら、橋について考えられる条件を何百項目も入力すれば、より正確になるのではないか。

しかし、それも簡単ではありません。

条件を細かくしすぎれば、必要な資料が揃わず計算できない橋が増えるかもしれません。入力作業にも大きな手間がかかります。逆に、条件が少なすぎれば、異なる橋を同じものとして扱ってしまいます。

つまり、

どんな条件がHLRに影響するのか。
どこまで条件を持たせるのか。

その設計自体も、HLR Engineを作るうえで重要になります。

今回は答えを出しませんが、入力条件を決めることは意外に難しい、というところまでを押さえていただければと思います。

6.計算条件を、どうやって残す?

もう一つ、問題があります。

仮に必要な入力条件を決められたとしても、それだけでは終わりません。半年後にその計算を見たとき、

「この19人年って、どんな条件で計算したんだっけ?」

となってしまっては困ります。

橋の形式、幅、場所、評価期間、計算対象……。計算に使った条件を、後から確認できる形で残しておく必要があります。

そこでHLR Engineでは、「今回の計算では、何をどんな条件で計算したのか」を一つにまとめて記録する

という考え方が必要になりました。

それが、次回ご紹介する「Input Card(入力カード)」です。

次回は??

答えだけを残すのではなく、「その答えを出したときの条件」も一緒に残したい。

そこで考えたのが、HLRの「Input Card」です。

次回は、この入力カードについてご紹介します。HLRでは、計算結果を出す前に「何を、どんな条件で、どこまで計算したのか」を決めることが重要です。同じ「50mの橋」でも、入力条件が違えば必要な労働量は変わります。今回は「計算が難しい」というお話ではなく、計算する対象をきちんと定義することが難しい、というお話です。

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