HLRを比較のための指標として使うなら、まず必要なのは「同じ条件・同じルールなら、何度計算しても同じ答えになること」です。精度を高める前に、HLR Engineでは「再現性」を重視しました。
1.前回の50mの橋を、もう一度考えてみる
前回の記事では、地方にある長さ50m程度の道路橋を例に、「この橋を100年間維持するために、社会全体でどれだけの労働が必要なのか」を積み上げて考えるのがHLRだとご紹介しました。
では、実際に計算して「100年間で20人年」という結果が出たとします。
ところが、翌日に同じ橋を同じ条件で計算したら22人年になりました。さらに別の人が計算すると、18人年になりました。
これでは困ります。
2.正しいかどうか以前に、比較できない
20人年、22人年、18人年。どの数字が最も現実に近いのかを議論することは、もちろん重要です。
しかし、その前に問題があります。同じものを同じ条件で評価しているのに、結果が毎回変わる指標では、比較ができません。
橋Aと橋Bを比較したとき、その差が橋そのものによるものなのか、計算するたびに数字が揺れたためなのかが分からなくなってしまいます。
3.そこで最初に「再現性」を重視しました
HLR Engineを作るうえで、私は最初から完璧な精度を求めるのではなく、次のことをまず大切にしました。
同じ入力条件+同じ計算ルール → 同じ結果
ここでいう「同じ条件」には、橋の長さや構造などの条件だけではなく、点検頻度や、補修・更新の考え方など、計算に使うルールも含まれます。
条件やルールを変えれば、結果が変わるのは当然です。しかし、変えていないのであれば、答えも変わりません。この状態を、まず作ります。
4.「毎回20人年」だから、20人年が絶対に正しいわけではない
ここで、丁寧にお伝えしておきたいことがあります。再現性と正確さは、別の問題です。
たとえば、本当の必要労働量が21人年だったとします。
毎回20人年と計算される仕組みであれば、根拠データや計算ルールを改善して、20人年を21人年に近づけていくことができます。
一方、同じ条件なのに18、20、22と毎回答えが変わるのであれば、改善した結果なのか、単なる計算の揺れなのかを判断できません。
まず答えを安定させる。そのうえで精度を高めていく。これが、HLR Engine開発の基本的な考え方の一つです。
5.次回のトピックは
ただし、「20人年」という数字を見て、20人が必要なのだと考えてはいけません。
「人」と「人年」は、似ているようで、意味がかなり違います。
次回は、「19人必要」と「19人年必要」は何が違うのかを、同じ50mの橋を使って考えます。

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