HLRが表しているのは「そこに何人いるか」ではなく、「どれだけの労働が必要か」です。そのためHLRでは、人数ではなく、時間を含めた「人年」という単位で労働量を考えます。
1.「この橋には19人必要です」と言われたら?
これまでと同じ、地方にある長さ50m程度の道路橋を考えます。
例えば、この橋の大規模修繕に19人が関わったとします。
「この橋の修繕には19人の労働力が必要だった」
一見すると分かりやすい説明です。しかし実は、これだけでは、どれくらいの労働が必要だったのかが分かりません。19人が1年間働いたのか、1か月だけ働いたのかで、必要な労働量は大きく違うからです。
2.19人×1年と、19人×1か月
ここで、ごく単純化した例を示します。
19人 × 1年間 = 19人年
一方、
19人 × 1か月 = 約1.6人年
同じ「19人が働いた」という仕事でも、働いた期間によって労働量はまったく違います。
だからHLRでは、「何人が関わったか」だけではなく、人数と時間を組み合わせて労働量として捉えます。そのための基本的な単位が「人年」です。
※今回は概念を理解していただくため、勤務時間や稼働日数などは細かく扱わず、単純化した例としています。
3.橋の100年間では、人手の使われ方がずっと違う
同じ50m橋でも、100年間ずっと同じ人数が働いているわけではありません。建設するときには、多くの人が一定期間集中して働きます。完成後の通常点検なら、数人が数日間だけ関わるかもしれません。補修が必要になれば、その年は労働量が増えます。さらに数十年後の大規模修繕では、再びまとまった労働力が必要になります。
つまり、
「この橋には何人必要なのか?」
だけでは、橋を支えるために必要な労働を十分には表せないのです。
4.HLRが積み上げるのは「人」ではなく「労働量」
ここで、第1回でご紹介した「労働力の積算」につながります。
HLRで積み上げたいのは、ある瞬間の配置人数ではありません。建設、点検、補修、大規模修繕、更新、そして最終的な撤去など、それぞれの仕事で必要となる労働量を積み上げていきます。
そのため、「この橋を100年間支えるために○人必要」ではなく、「この橋を100年間支えるために○人年の労働が必要」と考えます。
ここが「人数」とHLRの大きな違いです。
5.では「100年間で19人年」なら、毎年0.19人でいい?
ここで、あえて次の疑問を考えてみましょう。
仮に、ある橋を100年間維持するために、合計19人年の労働が必要だったとします。単純に100年で割ると、
19人年 ÷ 100年 = 年平均0.19人年
になります。
では、毎年0.19人分の人手さえ確保しておけば、この橋は維持できるのでしょうか。
もちろん、そう単純ではありません。建設や大規模修繕の年には大量の人手が必要になり、何もない年にはごくわずかな人手しか必要ありません。
総労働量と、「その年、その瞬間に何人必要なのか」は別の問題なのです。
HLRでは、この「いつ労働力が必要になるのか」も重要なテーマになります。これは、後の記事で改めて考えたいと思います。
6.今回のまとめ
最後に、今回のメッセージに戻ります。
人=人数。
人年=労働量。
似ているようですが、意味は違います。
HLRが測ろうとしているのは、「何人配置されているか」ではなく、インフラをつくり、維持し、更新していくために、社会がどれだけの労働を必要とするのかです。だからHLRでは「人年」を使います。
そして次回は少し視点を変えて、HLR EngineではAIを使っているのに、なぜAIそのものにはHLRを計算させないのかについて考えます。

コメント