HLR Engineの開発には、AIを積極的に活用しています。しかし、正式なHLR値はAIの回答ではなく、「確定した入力条件」と「確定した計算ルール」から計算します。AIを使わないことが信頼性なのではありません。AIが得意な仕事と、再現性が必要な正式計算を分けることが重要だと、私は考えています。
1.「HLR Engineって、AIが計算するんですか?」
HLR Calculation Engineを開発しているというお話をすると、現在なら「AIを使って計算しているのだろう」と想像される方もいらっしゃるかもしれません。
実際、HLR Engineの開発にはAIをかなり活用しています。
しかし、正式なHLRの数字そのものを、AIに答えてもらう仕組みではありません。
この点を、冒頭ではっきりお伝えしておきます。
2.それでもAIは、HLR開発の重要な道具
AIを使っていないわけではありません。むしろ、積極的に使っています。
前回までと同じ50mの橋を例にします。この橋を100年間支えるために必要な労働を考えるとき、
・どんな作業が発生する可能性があるか
・どんな資料を確認すべきか
・検討項目に抜けがないか
・条件をどう整理すればよいか
といった作業では、AIが大きな助けになります。
資料整理、条件候補の整理、検討、そしてHLR Engineそのものの開発にも、AIを活用しています。人間だけですべてを行うより、はるかに速く、多くの可能性を検討できます。
3.でも「この橋は19.3人年」とAIには決めさせない
ここから、今回の核心に入ります。
AIに、
「この50mの橋を100年間維持するために必要なHLRを計算してください」
と質問すること自体は可能です。そして、それらしい数字が返ってくるかもしれません。
しかし、HLR Engineではその数字を正式なHLR値にはしません。
なぜなら、HLRを比較のための指標として使うには、「それらしい答え」ではなく、同じ条件・同じルールなら同じ答えになることが必要だからです。
これは、第2回「同じ条件なら、同じ答えにしたい」でお話しした考え方そのものです。
4.AIが出すのは「候補」。正式計算に使うのは「確定した条件」
ここが、今回最も重要な部分です。
AIが、
「この作業も考慮した方がよいのではないか」
「この資料が参考になるのではないか」
と候補を示すことはあります。
しかし、
AIが提案したこと = 正式な計算条件
にはしません。
資料や根拠を確認し、何を計算条件として採用するのかを確定します。その後で、HLR Engineが、決められた計算ルールに従って計算します。
シンプルに表現すると、次のような役割分担です。
AI:探す・整理する・候補を出す・開発を助ける
↓
入力条件を確定する
↓
HLR Engine:確定したルールで計算する
5.AIを使うからこそ、境界線を決めておく
AIを使うか使わないか、という二択ではありません。
AIには、AIが得意な仕事を任せます。
一方で、後から「なぜこの数字になったのか」を説明しなければならない正式な計算は、確定した条件とルールに基づいて行います。
そうすれば、
AIによる開発・整理の速さと
計算エンジンによる再現性
の両方を生かせます。
HLR Engineでは、この境界を最初から意識して設計しています。
6.ところが、次の問題が出てくる
「確定した条件を使って計算する」と言うのは簡単です。
しかし、実際に50mの橋についてHLRを計算しようとすると、「では、その「確定した条件」をどうやって決めるのか?」という問題が出てきます。
橋の形式、幅、場所、点検頻度、補修周期、更新時期……。何を入力するかによって、当然HLRの結果も変わります。
そこで次回は、「HLRは『答え』より入力条件が難しい」というトピックについてご紹介します。

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