1.やりたいことはたくさんある。でも、何から作るか?
HLR Calculation Engineでは、さまざまなインフラの人的労働量を積算することを目指しています。異なる整備方式を比較したり、将来必要となる労働力を推計したりすることも、実現したいことのひとつです。
やりたいことは多くあります。しかし、最初からすべてを作ろうとすると、開発は一気に複雑になります。何から手を付けるのか、優先順位が必要でした。
そこで私は、最初の開発目標を一つに絞りました。
「同じ条件なら、必ず同じ答えが出ること」
これが、今回の開発の出発点です。
2.AIに計算を任せれば、もっと早く作れるのでは?
「計算もAIに任せれば、もっと早く作れるのではないか」と思われる方もいるでしょう。ここでは、身近な文章作成を例に考えてみます。
AIに同じ質問を繰り返すと、回答の趣旨はほぼ同じでも、言い回しや文章量、説明の順序が少し変わることがあります。文章作成であれば、その程度の違いはほとんど問題になりません。むしろ、自然な文章になることもあります。
しかし、計算でも同じことが起きるとどうでしょうか。前提条件の解釈や計算の手順が少しずつ変わってしまうと、最終的な数値に違いが生じる可能性があります。インフラの人的労働量を比較する際に、計算するたびに数字が変わるのでは、評価指標として使いにくくなってしまいます。
ここでお伝えしたいのは、AIが計算を間違える、という話ではありません。AIが毎回同じ判断をするとは限らない、ということです。
もちろん、AIを使っても、計算ルールを固定して外部の計算処理に実行させれば、再現性は確保できます。問題はAIを使うことそのものではなく、計算方法の判断まで毎回AIに任せてしまうことにあります。
3.まずは計算ルールを固定することにした
だから、計算のルールを固定することにしました。
HLR Calculation Engineでは、計算のたびにAIが計算方法を考えるのではなく、あらかじめ定めたルールに従って計算する方式を基本としました。入力条件、評価期間、使用する係数、計算方法などを固定します。これによって、同じ条件から同じ結果が得られるようにします。
また、結果がおかしい場合にも、入力条件、係数、計算ルールのどこに原因があるのかを調べやすくなります。
ただし、ここで重要なことがあります。再現性と正確性は別のものだということです。同じ答えが何度出ても、その計算方法自体が間違っていれば、正しい結果にはなりません。だからこそ、Reference Caseを使った検証も必要になります。
4.高度な機能は、その後に積み上げればよい
基本となる計算の再現性が確保できれば、その上に新しい機能を積み上げていくことができます。今後必要になるものとして、次のようなものがあります。
- 標準仕様書や積算資料などのデータベース化
- インフラの種類に応じた計算ルールの拡充
- 複数の整備・維持管理方式の比較
- 将来の労働需要の推計や感度分析
最初からこれらを全部実装するのではなく、小さくても安定して動く計算エンジンを先に作ることを優先しました。まず安定した土台を作り、その上に機能を追加していく考え方です。
5.再現性は、HLRを社会で使うための出発点
HLRは、単に数字を出すための仕組みではありません。将来的には、インフラの整備方法や維持管理方法を比較し、限られた人的労働力をどのように使うかを考えるための判断材料にしたいと考えています。
そのためには、計算結果について、信頼して議論できることが必要になります。
高度な機能を急いで増やすより、まずは同じ条件から同じ答えが得られ、結果を検証できる仕組みを作る。それが、HLR Calculation Engineの開発で最初に選んだ方針でした。

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