計算条件を変えて、もう一度計算してみる
前回までの開発日記では、HLR Calculation Engineの基本的な計算処理が動き始めたことをご紹介しました。次に考えたのは、入力条件を変更したときの扱いです。
例えば、橋梁のHLRを計算したあとで、点検頻度や補修周期を変えて、もう一度計算してみたくなることがあります。新しい結果を出すこと自体は、難しくありません。
しかし、ここで一つの疑問が生まれます。新しい計算結果で、前の結果を上書きしてよいのでしょうか。
上書きすると、何が変わったのか分からなくなる
具体的な例で考えてみます。次の数値は説明用の架空例であり、実際の計算結果ではありません。評価期間やその他の条件は同じと仮定します。
| 最初の計算 | 条件変更後 | |
|---|---|---|
| 点検頻度 | 5年に1回 | 3年に1回 |
| HLR | 30人年 | 34人年 |
仮にこのような結果が出たとします。ここで、新しい34人年という数字で、最初の30人年を上書きしてしまったらどうなるでしょうか。以前どのような条件で計算したのか、なぜ4人年増えたのかを、後から確認しにくくなります。
これは、将来の維持管理方法を比較するときにも問題になります。点検を5年に1回にした場合と3年に1回にした場合で、労働量がどれだけ違うのか。その比較をするには、変更前の計算も手元に残っていなければなりません。変更前の計算にも、残しておく価値があるのです。
そこで、別のCalculationとして記録する
HLR Calculation Engineでは、入力条件を変更して計算する場合、以前の結果を上書きするのではなく、別のCalculation(計算)として扱う考え方を採用します。
イメージとしては、次のようになります。
まず、点検を5年に1回とした「Calculation A」があり、結果は30人年です。そこから点検頻度の条件だけを変更して計算したものが「Calculation B」で、点検を3年に1回とした結果は34人年です。AとBは、それぞれ独立した計算として保存されます。
このように記録しておけば、どの条件を変更したのか、その結果がどれだけ変化したのかを、後から確認できます。
ここで役に立つのが、以前の記事でご紹介したInput Cardです。計算ごとに入力条件がまとまって記録されているため、AとBを見比べれば、違いが「点検頻度だけ」であることがすぐに分かります。1か所だけ変えた計算なら、その1か所が結果にどう効いたのかを、素直に読み取ることができます。
履歴を残すことで、比較や検証ができる
履歴を残すことには、単に過去の数字を保存する以上の意味があります。
点検頻度を変えた場合、補修周期を変えた場合、橋の構造を変えた場合など、それぞれの計算結果を並べて比較できるようになります。どの条件がHLRに大きく影響するのかを探るときにも、履歴は手がかりになります。
また、後になって計算条件に誤りが見つかることもあるでしょう。そのときも、以前の計算を残したまま、修正後の計算を新しく追加できます。何が間違っていて、どう直したのかも含めて記録に残ります。
つまり、計算結果だけでなく、検討の過程も残せるようになります。HLRを将来のインフラ計画に活用するうえで、これは重要な部分だと考えています。
計算結果は、積み重ねていくもの
HLR Calculation Engineは、最新の計算結果を表示するためだけのものではありません。どのような条件で計算し、何を変更し、その結果がどう変わったのか。それらを記録することで、後から検証できる計算システムを目指しています。
新しい答えが出たからといって、古い答えが不要になるわけではありません。条件を変更したら、新しい計算として残す。そうすることで、計算結果だけでなく、そこに至る検討の過程も追いかけられるようになります。

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